実習|金沢百枝監修|西洋中世美術の技法|全5回
実習|金沢百枝監修|西洋中世美術の技法|全5回
*2023年3月31日まで、お申込みは青花会員限定です
*会費は各回の材料費込みです
1|2023年5月24日(水)14-18時|開場13時半(以下同)
2|2023年6月6日(火)14-18時
3|2023年7月18日(火)14-18時
4|2023年8月4日(金)14-18時
5|2023年9月5日(火)14-18時
場所……工芸青花|東京都新宿区横寺町31-13(神楽坂)会場地図
定員……8名
内容……講座「キリスト教美術をたのしむ」を8年間つづけました。そこでは、おもに中世美術をみながら、「なにが表現されているのか」を語ってきましたが、さらに理解をふかめるために、それが「いかに描かれたのか」を体験する講座/実習をはじめることにしました。(金沢百枝)
1|モザイク|金沢百枝+荒木智子
中世美術の華であるモザイク画。その歴史や技法をまなんだあと、素材(大理石や色ガラス)を割ることからはじめて、初期中世の作品(ラヴェンナ)にもとづく小品をつくります。
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荒木さんから……今回は天然大理石やズマルト(ヴェネツィア産モザイク用ガラス)を自ら割って、モザイクの首都・ラヴェンナに残るモザイクの小さなRiproduzioneを作っていただきます。複製や模倣を意味するイタリア語の「Riproduzione」ですが、ぜひ「もう一度作りあげる」というニュアンスで受け止めていただきたいです。5、6世紀の職人が並べたテッセラ(石片、ピース)の流れをじっくり観察し、その形に似せて素材をカットし一つ一つ並べていくと、時間も距離もぜんぶ越えて、当時の職人の気持ちを追体験出来る瞬間が訪れます。「このカーブにずいぶんと力を入れてる!」「ここはうっかりしたのかな……」など、当時の職人と語らうような時間を楽しみ、ご自身ならではのモザイクを作り上げてください。モチーフはラヴェンナの聖堂の壁や天井を彩っている幾何学模様や花など、数種類からお選びいただけます。制作したモザイクはブックエンドに仕立てられます。文庫や新書にぴったりの程よいサイズ感です。ぜひ皆さまの暮らしの中に、ラヴェンナのモザイクの輝きを取り入れてください。
2|フレスコ|金沢百枝
絵具チューブがない時代、画家たちはどのように絵を描いていたのでしょうか。岩や石を砕いた色の粉(顔料)をどうやって支持体(壁や板など)に固着させるかが、絵画技法のわかれ道でした。卵黄(テンペラ)、アラビアゴム(水彩)、乾性油(油彩)といった固着剤を必要としないのがフレスコ画です。その「化学」を知るとともに、石灰モルタルに顔料が吸いこまれる感覚を実感してみましょう。
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金沢さんから……マルタ(石灰モルタル)を煉瓦(壁材)に塗ることからはじめます(ほんらいは左官屋さんの仕事です)。モルタルが乾くまえ、最高の状態の時間内に描くのが、画家ジョットが開発したというブオン・フレスコです。顔料がぐいぐいモルタルに吸いまれてゆく、ほかの技法では味わえない醍醐味を感じてください。
3|テンペラ|金沢百枝+今村友宣
中世後期からルネサンス期に、テンペラ画やフレスコ画が油彩画に取ってかわられたのはなぜか。大学では化学をまなんだという今村さんの理論的説明と、ゆるかわな実演、そして精密なレプリカ作品が間近でみられます。
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今村さんから……中世イタリアで発展した黄金背景テンペラ画。卵の絵具と金箔装飾を組み合わせた技法は、700年経った作品でも鮮やかな色と輝きを保っています。金地板絵がどのような手順で制作されたのか、チェンニーノ・チェンニーニ『絵画術の書』(1400年頃)に基づいて技法の本質をお話しします。
1)テンペラ絵具の作り方
2)金箔の貼り方
3)板絵の制作手順
4)中世の顔料(ウルトラマリンの作り方)
5)テンペラ絵具と油絵具の違い
受講者の皆さんには、実習として「金箔板に刻印を打つ」と「石膏板にテンペラ画を描く」を体験してもらいます。
4|羊皮紙写本|金沢百枝+八木健治
羊皮紙はどのようにつくるのか。没食子インクとは? 羊皮紙研究の第一人者・八木健治さんの写本コレクションを鑑賞するとともに、じっさいに羽ペンで描いてみましょう。
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八木さんから……古代から中世の書物文化を支えてきた素材「羊皮紙」。人間の歴史に欠かせない支持体ながら、日本では実物を見る機会は限られています。この羊皮紙ワークショップでは、まるまる1頭分のひつじ皮から、羊皮紙を作っていきます。脱毛、木枠張り、半月ナイフでの削り、軽石での磨き――それらの工程を交代で体験しながら全員で1枚の羊皮紙を仕上げます。中世の職人や修道士たちは、その上に端正な文字を書き、きらびやかな装飾を施しました。中世写本の実物も多数お持ちしますので、中世の人が触れた羊皮紙の感覚を指先で感じてみてください。神の言葉や物語、そして歴史を支えてきた素材「羊皮紙」を、その原料から完成品まで五感(嗅覚も)で体験できる講座です。
5|カリグラフィー|金沢百枝+白谷泉
書字の歴史をまなぶとともに、さまざまなペンの魅力を知ります。白谷さんはイギリスでカリグラフィーを習得、作家であるとともに、紋章学の研究者でもあります。
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白谷さんから……印刷技術がない時代は、本は全て手書きで書かれていました。その写本の文字があまりに美しかったことからその芸術性が見直されて現代に蘇った文字芸術、それがカリグラフィーです。手書き文字には長い歴史があり、カリグラフィー書体は未知数。当時の写字生達に思いを馳せながら、実際のカリグラフィーペンとインクを使って、伝統的な文字を書く体験をしてみませんか。それらの文字が現代ではどのように活用されているのかなどもご紹介いたします。デジタルの時代だからこそ、人の温もりが感じられるような手書き文字の魅力を少しでもお伝えできたら嬉しいです。
講師……金沢百枝 KANAZAWA Momo
美術史家。多摩美術大学美術学部芸術学科教授。西洋中世美術、主にロマネスク美術を研究。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。理学博士・学術博士。2011年、島田謹二記念学藝賞。2016年、サントリー学芸賞。著書に『ロマネスク美術革命』(新潮社)、『ロマネスクの宇宙 ジローナの《天地創造の刺繍布》を読む』(東京大学出版会)、共著に『イタリア古寺巡礼』シリーズ(新潮社)。
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講師……荒木智子 ARAKI Tomoko
モザイク作家。熊本県出身。イタリア・ラヴェンナのモザイク工房 Koko Mosaico にてモザイク技法を学び、帰国後モザイクアトリエ Mosaico Campo を立ち上げる。「暮らしと共にあるモザイク」をテーマに、商業施設や個人住宅へのモザイク制作や、モザイク教室・ワークショップを開催。
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講師……今村友宣 IMAMURA Tomonobu
画家。1974年静岡県生れ。明治大学理工学部工業化学科卒業。油彩画を高橋亮馬氏に、テンペラ画を石原靖夫氏に学ぶ。古典技法による絵画制作に従事。
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講師……八木健治 YAGI Kenji
羊皮紙工房主宰。1976年名古屋生れ。国際基督教大学教養学部語学科卒業、上智大学大学院外国語学研究科博士前期課程修了。自宅の風呂場でひつじの毛を剥ぎ羊皮紙を作ることから出発し、現在は羊皮紙の販売、羊皮紙写本等の展示、および羊皮紙や写本に関する執筆・講演等を中心に活動。『羊皮紙の世界』(岩波書店、2022年)、『羊皮紙のすべて』(青土社、2021年)、『図書館情報資源概論』(分担執筆、ミネルヴァ書房、2018年)、『モノとヒトの新史料学――古代地中海世界と前近代メディア』(分担執筆、勉誠出版、2016年)をはじめ、羊皮紙や書写材に関する文章を多数執筆。西洋中世学会会員。
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講師……白谷泉 SHIRATANI Izumi
カリグラファー。広告会社勤務を経てカリグラフィー留学のため渡英。カリグラフィー・西洋紋章・装飾美術を専門的に学ぶ。現在は個人スタジオ主宰、コミッションワーク・各地W S や企業でのセミナー講師など幅広く活動。NPO法人Japan Letter Arts Forum(J-LAF)理事、英国Calligraphy & Letter Arts Society (CLAS) フェロー、共著「カリグラフィーブック」(誠文堂新光社)
この講座/実習は、技法のイロハをまなぶことが目的です。自分には絵心がないかも……などと心配する必要はありません。モザイク、フレスコ、写本工房の弟子になったつもりでたのしんでいただけましら幸いです。(金沢百枝)
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